東京新電機事件(東京地判平11・4・20) 定年退職金には「会社都合」の高い支給率が必要か 一律適用でなくてもよい
2000.06.12
【判決日:1999.04.20】
支給条件どう定めるかは使用者裁量
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告の社員であった原告が定年により退職したところ、支給された退職金額が、会社都合による場合等の高い支給率ではなく、それ以外の場合の低い支給率に基づくものであったため、定年退職の場合には会社都合等による場合の高い支給率に基づく退職金が支給されるべきであるとして、その差額分の支払いを請求した事案である。
判決のポイント
1、原告は、定年退職の場合が退職金規定5条所定の「会社都合」による退職に該当することの根拠として、一般に、定年退職が会社都合による退職事由の典型例であるとして論じられ、または認識されていることを挙げる。
確かに、一般に定年退職は会社都合による退職事由の中心的事由となるとして論じられている。就業規則等において、定年退職の場合にいかなる退職金支給率の適用を受けるかについて具体的な規定がないが、同支給率に関し、会社都合退職の場合を標準としており、これと対置される「自己都合退職」等の場合には支給率が低く定められているという場合を想定すると、右の理は妥当するということができる。定年退職とは、労働者の労働能力や適格性がいまだ十分に存在していても、一定年齢に到達すると一律に労働関係が終了するとの性質を有する労働契約終了理由であり、これを「自己都合退職」等と同列に扱うことはできないからである。…
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平成12年6月12日第2300号13面 掲載