中労委(大阪証券取引所)事件(東京地判平16・5・17) 証券取引所は解散会員会社従業員の“使用者”か 支配認めた労委判断を否定 ★
証券媒介会社が解散に至り、再雇用などに関する同社労組の団交要請を拒否した証券取引所の行為が不当労働行為だとの申立てに対し、証取所の使用者性を認容した労働委員会の命令の取消しを訴えたもので、判決は「雇用主と同視できる程の支配的地位にない」と認定、地労委、中労委の判断を否定した。
雇用主と同視できず 不当行為の余地なし
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
原告大阪証券取引所(X)は、証券取引法に基づき設立された会員組織の公益法人(その後株式会社に組織変更)であり、その会員は、有価証券の売買取引等を業務とする正会員(110社)と有価証券の売買取引等の媒介を業務とするN会員(本件訴外「N証券株式会社」が唯一の会員)から成っていた。XはN社の株式の27%を保有し、会員としての業務について管理、監督する立場にあった。ただしN社は、本件解散まではその従業員の労務管理については就業規則を制定、分会組合との間に労働協約を締結、人事を自ら決定していた。
N杜は平成5年頃から赤字経営となり、Xから代表取締役を受け入れ人員削減などの再建策を検討していたが、平成11年5月廃業・会社解散を決定した。
N社の従業員で組織する「大阪証券労働組合N分会」は、Xに対し①会社の企業再開および組合員の雇用確保、②組合員をXや証券関係業界で再雇用すること等を議題とする団体交渉を申し入れたが、Xは当事者でないとして応じなかった。この対応について、大阪地労委・中労委は、XをN分会との関係で労組法の「使用者」であると判断し、団体交渉拒否について不当労働行為を認定した。そこで、Xが不当労働行為救済命令取消訴訟を東京地裁に提起した。…
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