日本貨物鉄道事件(名古屋地判平11・12・27) 60歳定年延長に伴う基本給減額、昇給の停止は? 年齢差別に合理性認める
「不利益変更の法理」緩やかに適用
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という)の分割民営化により被告に運転士として雇用された原告らが、被告が平成2年4月1日から施行した「60歳定年実施に伴う社員規程」により、社員が満55歳に到達した月の翌月以降の労働条件について、基本給を55歳到達月における基本給の65%(満55歳到達時に退職手当を受給したときは55%)とし、定期昇給はなく、昇進・昇格もないなどと定めたことが、①就業規則の不利益変更に当たるもので、かつ、その変更に合理性がなく違法であること、②年齢による不合理な差別であって公序良俗に違反すること、③同一労働同一賃金の原則に反し違法であることから、無効であるとして、主位的には、賃金請求権に基づき、それぞれ55歳到達月の翌月から各退職月まで(ただし、原告木下については平成11年9月まで)の間における右就業規則の変更により、減額された分の未払賃金の、予備的には、不法行為による損害賠償請求金に基づき、右未払賃金相当額の、各支払いを求めたものである。
判決のポイント
①本件就業規則の変更においては、55歳定年制を廃止して60歳定年制を実施するとともに、定年を延長された55歳以上の労働者の労働条件について、基本給を減額し、昇給、昇進をなくすというものであり、従前、労働契約の対象となっていなかった55歳以上の労働者について、労働条件を設定することは、形式的には、労働者の既得権を奪うようなものではなく、既存の労働条件の不利益変更には当たらないものである。…
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