日本交通公社事件(東京地判平12・6・23) Aからの旅行代金をBの代金に流用、懲戒解雇は? 「社金の窃取着服」に当たる
他の社員名使用等 極めて悪質と判断
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
旅行業務等を営業するY社S支店海外旅行課長であったXは、①平成11年1月20日にHから旅行代金87万800円を受領し入金処理したが、同月26日、他の社員を操作者と表示して87万800円を出金処理した。そして、同年2月6日、右87万800円のうち、20万円についてはXの知人名義のクレジット番号を使用してクレジット入金処理をし、62万800円についてはH名義で現金入金処理をし、5万円については値引申請・承諾書を作成して帳簿上架空の値引き処理をし、着服した。②同年1月27日にMから旅行代金91万7240円を受領し入金処理したが、同日、操作者を他の社員と表示してM名義で現金11万7240円の入金処理と91万7240円の出金処理をした。そして、翌16日にM名義で右入出金処理の差額80万円の現金入金処理をした。③平成10年12月21日にTから旅行代金47万9380円を受領し入金処理したが、平成11年1月8日、操作者を他の社員と表示してT名義で現金9380円の入金処理をし、同日、操作者を他の社員と表示して現金47万9380円の出金処理をした。そして、同年2月4日に右入出金処理の差額47万円について、Xの兄名義のクレジット番号を使用してクレジット入金処理をした。
Y社は、Xの各行為は、就業規則182条1号所定の「社金を窃取着服した場合」に該当し、不正な会計処理を他の社員名義で行うなど極めて悪質であるとして、Xを懲戒解雇した。…
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