日本コンベンションサービス事件(最判平12・6・16) 従業員を引抜き独立した者への損害賠償請求は? 誠実義務に反する違法行為
民訴法の損害額の認定(248条)を適用
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Y会社は、国際会議、学会、イベントの企画運営を業とする会社であり、Xら7名は、従業員であり、Zら2名は取締役であったが、いずれも退社して、退職金等を求めた。しかし、Y会社は、ZとXが主導して、同業であるA会社を設立して、従業員引き抜きを行ったとして、Xらには懲戒解雇事由があり、退職金請求権はないとし、さらにZ、XとA会社に対し損害賠償を請求した。
第一審の大阪地裁はZとXによる従業員引き抜きの事実を認め、Xの退職金請求権を否定したが、それに応じた者についてはこれまでの功績を失わせるほどの重大な背信行為とまでいえないとして、退職金請求を認めた。また、Y会社のZ、A、Xに対する損害賠償請求については、違法行為はあったものの、損害の立証がないとして、請求を棄却した。
控訴審の大阪高裁は、Xについて永年の功績を失わせるほどの重大な背信行為とはいえないとして退職金請求を肯定した一方で、ZおよびXの違法行為によりY会社の社会的、経済的信用が減少したことが認められ、損害の性質上その額を立証することが困難であるから、民訴法248条によって金400万円をもって相当な損害と認めるとして、Y会社の請求を一部認容した(なお、A会社の責任については、Z、Xの本件行為がA会社の設立以前であることを理由に認めなかった)。そこで、Z、Xが上告に及んだ。…
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