函館信用金庫事件(最判平12・9・22) 週休2日制で1日の時間を25分延長、不利益変更か 必要性ある合理的内容 ★
不利益程度、代償措置等を総合判断
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
Y金庫は、平成元年の完全週休2日制の導入にあたり、平日の所定労働時間を1日25分延長し、土曜日は休日とする就業規則の改正を行い(本件就業規則の変更により、所定労働時間は1日7時間35分、週37時間55分となる)、Xらの所属する労働組合と団体交渉を行ったが、妥結に至らなかったため、労働組合の同意のないままに、右改正就業規則を実施した。
Xらは、右改正就業規則は、労働条件を不利益に変更するもので無効であるとして、従来午後5時以降の勤務につき支払われていた時間外手当との差額を未払い賃金として請求した。
一審(函館地判平6・12・22)は、Xらの請求を棄却したが、原審(札幌高判平9・9・4)は、本件就業規則変更の効力を否定し、Xらの請求を認容した。本判決は、原審を破棄し、Xらの請求を棄却した。
判決のポイント
被上告人らにとっては、平日の所定労働時間が25分間延長されることになったのであるから、本件就業規則変更が、被上告人らの労働条件を不利益に変更する部分を含むことは明らかである。そこで、まず、変更による実質的な不利益の程度について検討すると、25分間の労働時間の延長は、それだけをみれば、不利益は小さなものとはいえない。しかしながら、本件変更前の被上告人らの所定労働時間は、第三土曜日を休日扱いとしていた実際の運用を前提に計算しても、第一、第四及び第五週が40時間、第二及び第三週が35時間50分であって、年間を通してみれば、変更の前後で所定労働時間に大きな差がないということができる。…
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