板橋商事事件(横浜地判平13・1・25) 年収毎年50万円の昇給の約束があったと未払い分の請求 契約内容とは認められない
2001.11.05
【判決日:2001.01.25】
防止策は入社時の「文書」による明示
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
原告Xは、賃金コンサルタントZの紹介で、平成6年4月、運送業を営む被告Yに年収550万円で採用され、平成11年3月に定年で退職するまで賃金は同額であった。ところが、Xは、Yに対し、①Yとの間で、Xの年収を毎年50万円昇給させるとの約束があったにも関わらず、在職中年収を据え置かれたとして、未払い賃金500万円の支払いを、②YがXを非管理職扱いにした組織表等を作成し、回覧文書の氏名欄を下位の者と逆転させ、賃金支払いを複数回にわたり、意図的に遅延させ、X宛の郵便物を隠匿、破棄する等の様々な嫌がらせを行い、これが不法行為であるとして、慰謝料500万円及び弁護士費用50万円を、③Xの退職後に支払われるべき賃金、賞与の一部の支払いを怠ったとして、未払い賃金2万3086円をそれぞれ支払うよう求めた事案である。
判決のポイント
1 Xの入社時、XY間に平成7年以降のXの年収を毎年50万円昇給させるとの合意があったか。
「Xは、平成6年3月31日のZからの電話の際、Yの回答として2年目以降は毎年50万円昇給するとの条件を伝えられたと主張」する。「しかし、①Xの勤務内容について全く未知数の採用前の段階で、Zの紹介だからといって、次年度以降の年収を無条件に昇給させるとの契約が締結されることは社会通念上考えがたいこと、…
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平成13年11月5日第2367号12面 掲載