風月荘事件(大阪地判平13・3・26) カラオケ店店長から時間外労働の割増賃金の請求 管理監督者に該当しない
人事権なく、勤務状況等も管理下に
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、カラオケ店、喫茶店、麻雀店、パチンコ店を経営するY会社に昭和61年7月に入社し、平成4年3月に喫茶店及びカラオケ店の店長として配置されていたXが、平成11年12月28日に、Y会社を退職し、時間外労働に対する割増賃金、退職金その他の賃金が未払いであるとして、それらの支払いを求めたという事案である。なお、Xの店長としての職務内容は、店舗運営の責任者として店舗運営全般に及んでおり、店舗内の従業員等のスケジュール管理を行うほか、ホール業務、厨房業務、レジ業務等について幅広く従業員等を指揮監督するというものであった。
判決のポイント
Xの賃金には住宅手当がないとはいえ、本件店舗の他の従業員の賃金等に比べ、風紀手当が格段に高額に設定されでおり、これは勤務が不規則になったり、勤務時間が長時間に及ぶことなどへの配慮がなされた結果であると推認できないではないが、Xには、Y会社の営業方針や重要事項の決定に参画する権限が認められていたわけではないし、タイムカードの打刻やXの分をも含む日間面着表の提出が義務づけられ、ある時期まで残業手当も支給されており、日常の就労状況も査定対象とされ、出退勤や勤務時間が自由裁量であったとも認められず、本件店舗の人事権も有していなかったのであって、Xは、勤務状況等も含めてY会社から管理されていたというべきであり、到底、経営者と一体的立場にあったなどとは認められず、…
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