ネスレジャパンホールディング事件(東京高判平13・9・12) 退職願の提出は強迫されたためと取り消し求める訴え 錯誤無効の主張に理由ない
2002.01.28
【判決日:2001.09.23】
懲戒処分との利害得失考え自ら判断
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Yの従業員であるXは、平成5年10月に課長代理に対する傷害事件を起こしたとして告訴された。Yは、懲戒処分等の権利を留保する旨通告していたが、平成11年12月にXが不起訴処分となり、平成12年になってYがこれを知ったため、これを踏まえて懲戒処分の検討を始めた。
そこで工場長は、平成12年5月17日、Xに対して、本社において処分を検討中であるが、家族のことも考えて正式な処分が決まる前に自分自身で行動してはどうかなどと述べて、暗に自己都合退職を促した。Xは同日付で退職願を提出し、工場長は同日これを受理・承認した。
しかし、翌18日、Xは退職願の撤回を言い出し、その後、強迫を理由とする取り消し、錯誤無効等を主張して、Yに対し労働契約上の地位の確認および賃金、慰謝料の支払いを求めて仮処分を申請し、さらに本案訴訟を提起した。
判決のポイント
1 仮処分および一審判決
仮処分では、Xが、懲戒解雇されて訴訟になれば長期間の争いとなるだろうが、これは自身の年齢等に照らして負担が大きい等と畏怖し、心理的に追い込まれた状態となって退職の申し込みをしたものであるとされ、…
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平成14年1月28日第2378号14面 掲載