黒川建設事件(東京地判平13・7・25) 法人格否認の法理もとに未払い賃金、退職金の請求 同一性あり債務免れない
2002.02.11
【判決日:2001.07.25】
外形的には独立も 実態は一事業部門
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、B社を退職した原告らが、被告Yと被告A社に対して、被告らは、B社を実質的に支配しているから、法人格否認の法理が適用されるべきである等と主張して、被告らに未払い賃金および退職金を請求した事案である。
判決のポイント
1、本企業グループでは、取締役は部長の上位に位置する管理職の一つと捉えられ、取締役就任後も従業員たる身分は失わず、取締役就任の期間も通算して退職金を算定していたことが認められるので、役員ゆえ退職金の規程の適用がないとする被告の主張は認められない。
2、株式会社において、法人格がまったく形骸にすぎないというためには、単に当該会社の業務に対し他の会社または株主らが株主たる権利を行使し、利用することにより、当該会社に対し支配を及ぼしているというのみでは足りず(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律9条は他社の事業活動を支配することを主たる事業とする持株会社を原則として適法とする)、…
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平成14年2月11日第2380号14面 掲載