シンワ運輸東京(運行時間外手当)事件(東京高判平30・5・9) 時間で増えない歩合給が残業代相当の仕組みは 労基法の割増計算額上回る
貨物の配送ドライバー3人が、運賃収入から算定した歩合給は時間外割増賃金に当たらないとして、別途支払いを求めた事案の控訴審。手当額が時間に比例しないとの主張を、裁判所は賃金規程の割増賃金の算出、支払い方法を正しく解釈していないとして採用せず、就業規則等で対価の趣旨は明らかなこと、給与明細等で通常の賃金と判別できるなどとして請求を棄却した。
規定から対価明確 給与明細には内訳
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は一般貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社である。
Xら(3人)は、平成21年にY社と期間を定めない労働契約を締結し、大型貨物自動車を運転して小麦粉を配送する業務に就いている労働者である。
Y社の賃金体系は、基本給等の基準内賃金と、時間外勤務手当、休日出勤手当、深夜勤務手当、運行時間外手当等の基準外賃金からなる。そして、所定労働時間を超えて、または休日に労働した場合には、時間外勤務手当または休日勤務手当を、深夜(午後10時~翌日午前5時)に勤務した場合には深夜勤務手当を支払うが、それは、基準内賃金の合計額を基礎賃金として、2割5分~6割の割増率をもって支給する(支給率は、労基法法定のとおりである)とされていた。
上記の時間外勤務手当、休日出勤手当、深夜勤務手当(以下総称して、「時間外手当」)は運行時間外手当として支給する。運行時間外手当は、乗務員が車両を運行することでY社が受託した先から得る運賃収入に70%を乗じた額に一定の率(運送物および車種によって異なる)を乗じて得られる額であるが、これが上記の計算による時間外手当の額よりも大きいときは運行時間外手当を時間外手当相当額として支給し、運行時間外手当の額が上記の計算による時間外手当の額よりも少ないときは、その差額を支給するものとされていた。
Xらは、Y社の支給する運行時間外手当は、その算定方法より労働時間との間に時間比例性がなく、実質的には歩合給である等を主張し、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら