一心屋事件(東京地判平30・7・27) 復職後は業務軽減し手当減、休職前の賃金請求 職務変更と減額に関連なし

2019.04.25 【判決日:2018.07.27】
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 ケガから復職時に業務変更と手当減額の打診を拒否した元従業員が、就労できなかったのは会社の責任として休職前の賃金を請求した。会社は、負担軽減のため業務を限ったと主張。東京地裁は、職務に対応する手当の廃止は許容されるが、定額残業代の不支給と通勤手当の減額は、人事権行使の範囲にとどまらず同意なく決定できないとした。使用者の責めに帰すべき事由による不就労に。

通勤手当をカット 不就労は会社責任

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 原告は平成25年9月21日、被告との間で雇用契約を締結し、被告の調理部門および業務(配送)部門の双方の業務を行い、調理、盛付、配送・回収、清掃、洗浄業務等に従事していた。

 平成28年4月24日、原告は、右手薬指をおにぎりを製造する機械に挟み、右環指指尖部損傷の損害を負い、4月25日から休職した。10月3日、原告は、医師からの就労可能という診断を踏まえ、復職の申入れを行ったが、被告は、勤務場所を調理部(洗浄室)に変更すること、時間外手当について7万円の定額支給から実際に残業した時間について割増賃金を支払う方法に変更すること、通勤手当も3万円から1万円に減額する旨の提案(以下「本件提案」という)を行うとともに、同提案に対する同意書に署名押印することを求めた。これに対し、原告は、被告が提案した労働条件での復帰には同意できない旨を伝えたうえで、10月11日、被告に赴くと、原告のタイムカードは準備されていなかった。被告からは原告が被告で働く以上、本件提案に対する同意書に署名して提出してもらいたいとの意向を有している旨の説明を受けた。原告は、就業せずに帰宅した。

 平成29年1月24日、被告代理人のN弁護士は、原告代理人に対し、…

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令和元年5月6日第3207号14面 掲載
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