国立大学法人Y大学事件(東京地判平30・9・10) 会議を無断録音し懲戒、処分公表に違法性は? 戒告は有効で名誉毀損せず
学長選考会議の無断録音やデータ送信などで戒告処分を受けた教授が、学内ホームページに処分を公表され名誉毀損と訴えた。東京地裁は、処分を適法かつ有効としたうえで、不祥事の再発防止を目的に処分の周知が規定化され、本人の特定もないことから請求を斥けた。仮に、本人と特定できたとしても、教授という公的立場にあり、内容も真実として違法性を否定した。
本人の特定もなく 周知する旨を規定
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
医学部教授であるXは、Y大学の学長選考会議において、自己の推す者が次期学長候補者に選考されないことが決定された後、会議を正当な理由なく無断で退席し、また、学長選考に係る議事については非公開とする旨の取決めがあったにもかかわらず、選考会議の審議状況を無断で録音したうえ、その内容を記した文書を、電子メールで約80人の医学部の教授らに送信して公開したとして(その後、転送されて多数の者に公開されることとなった)、戒告処分を受けた。
Y大学は、本件懲戒処分を学内専用ホームページ等で公表し(以下「本件学内周知行為」)、Xは、名誉毀損の不法行為による損害賠償として、慰謝料160万円と遅延損害金および学内専用ホームページへの謝罪記事掲載(民法723条)を求めるとともに、違法無効な本件懲戒処分により勤勉手当が減額されたと主張して、不法行為による損害賠償として、差額相当額45万余円および遅延損害金の支払いを求めて提訴した。…
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