Y社事件(横浜地裁川崎支判平30・11・22) ミスの言い争いから殴られ障害負い賠償求める 私的なケンカ会社責任なし
介護事業所内のケンカで障害を負ったオペレーターが、加害者の訪問介護員と会社に損害賠償を求めた。ミスの責任をめぐる言い争いから暴行に発展した。裁判所は、被害者の担当業務に注意指導は含まれず、事業執行と密接な関連はないとして使用者責任を否定。嫌悪感の衝突などが原因とした。会社に予見可能性はなく安全配慮義務も負わないが、加害者には過失3割として賠償を命じる。
注意指導は職務外 「予見」もできない
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y1会社(以下「Y1」)は、訪問介護サービスなど居宅サービスの提供等を業とする会社であり、利用者の緊急時の連絡方法として通報装置を利用者宅に設置していた。
Xは、Y1のパート従業員として、週末および祝日の夜間に浦安事業所に待機し、緊急コール等に電話対応をすることを主な内容とする夜間のオペレーター業務を担当し、Y2は、同社の訪問介護員(以下「ケアスタッフ」)として雇用され、定期巡回訪問介護業務等に従事していた。
XとY2は、Xの入社当日から折り合いが悪かったところ、Y2は、Xの入社3回目の勤務日に、利用者から、通報装置で緊急コールをしようとしたが、つながらなかったとの苦情を受けた(以下「本件トラブル」)。その原因は、Xが受信装置を適切に操作することができなかったためであった。しかし、Xは、Y2のミスであるとして責任を転嫁する言動をし、Y2にミスがあった旨の事実に反する報告書をパソコンで作成するような行動をとったため、Y2は、憤激して暴行に及び、Xは負傷し、身体障害等級第12級の後遺症が残った。…
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