日産自動車事件(横浜地判平31・3・26) 1200万円の課長職、管理監督者ではない!? 職責や権限なく割増賃金を
年収1200万円の課長の管理監督者性を争った事案で、東京地裁は、約360万円の割増賃金の支払いを命じた。管理監督者にふさわしい待遇がなされ、遅刻、早退の賃金控除はなく時間管理に裁量はあるが、経営者と一体的といえるだけの重要な職責と権限はないと判断。会議の発言権がなく部長の補佐にすぎないなど、経営意思の形成に対する影響力は間接的としている。
待遇ふさわしいが労働時間にも裁量
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、平成16年10月1日までに会社と期間の定めのない労働契約を締結し、役割等級N2職(課長職)の管理職として、25年4月よりダットサン・コーポレートプラン部でマネージャー、28年2月より日本LCVマーケティング部でマーケティングマネージャーに従事した。会社の従業員は同年3月末時点で2万2471人、N2職は1700人前後であった。
ダットサン・コーポレートプラン部は、経営陣に対し確約した利益(コントラクト)の実現に要する企画立案と実行を担い、実行に必要な全ての権限(各ファンクションの長への指揮命令権限等)を有する部署である。甲の所属当時の構成は、N1職(部長職)のプログラムダイレクター(PD)、N1職の次席プログラムダイレクター、N2職の主任・マネージャー2人(甲を含む)、PE1職(課長代理職)のスタッフ2人の合計6人であった。PE1職のAは甲の業務の補助を行っていた。
マネージャーは、PDが担当車種の投資額と収益率をCEOを含む経営陣に確約する商品決定会議(PDM会議)に出席するほか、各部門の長から、製品原価と販売価格の基礎となる数字について約束を取り付ける(ファンクションリプライ)権限を有している。また、マネージャーは、コントラクトの進捗確認と過未達を担当執行役員らに報告する会議(PCMPP会議)で、議事運営や報告、ファンクションリプライに未達の責任者に対して釈明を求める職務などを担当していた。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら