大島産業事件(福岡地判平30・9・14) 完全歩合給で採用、規程は固定給のみで効力は 就業規則下回る条件は無効
トラックの元運転者が、賃金規程にない歩合給が適用されたとして未払割増賃金などを求めた。賃金は、路線単価に貨物の量に応じた率を乗じていた。福岡地裁は、就業規則の日給月給制と異なる条件に合意したとしても、労働者に有利でなければ無効と判断。出来高給の割増賃金は25%のみで足り、就業規則の最低基準効に反するとした。路線単価の合計額を割増基礎としている。
割増25%のみで損 合意の効力認めず
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Y社に雇用されて長距離トラック運転者として稼働していたXが、Y社に対し、未払賃金や労基法114条に基づく付加金等の支払いを求めるとともに、Y社が、Xに対し、Xが業務指示を受けていた運送業務を無断で放棄したため、Y社は受注していた運送業務を履行できず損害を被ったと主張して、不法行為または債務不履行に基づく損害の賠償を求めた事案である。
本件における争点は11点にも及ぶため、実態と異なる賃金算定方法を定めた就業規則の適用の可否と業務の無断放棄によるXの損害賠償責任の有無について紹介する。
1 事実関係
Xの所定の労働条件は次のとおりである。
(ア) 雇用形態 正社員
(イ) 期間 期間の定めなし
(ウ) 職務内容 長距離貨物10トントラックの運転
(エ) 勤務地 本店勤務
(オ) 賃金支払方法 毎月20日締め、翌月5日払
(カ) 所定労働時間 始業時刻午後5時、終業時刻翌午前3時20分、休憩時間2時間20分
Y社は、Xに対し、いわゆる出来高で賃金を支払っていた。
Y社の本件就業規則には、「この規則は、会社に勤務するすべての従業員に適用する。ただし、パートタイマー等就業形態が特殊な勤務に従事する者について、その者に適用する特別の定めをした場合はその定めによる」旨の定めがあり、賃金規程では基本給は日給月給とされていたが、長距離トラック運転者について特別の定めはなかった。
(Xの失踪)
Xは、平成25年9月28日、Y社の本店で点呼を終えた後、同日の運送業務を履行せず、Y社からいなくなった(「本件失踪」)が、同年10月5日頃までに、Y社に戻って勤務を再開した。…
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