結婚式場運営会社A事件(東京高判平31・3・28) 割増87時間分を定額払、公序良俗違反の一審は 45時間超の固定残業認める
約87時間分の固定残業代を、公序良俗に反し無効とした事案の控訴審。基本給15万円に対し、残業代である職能手当は約9万円だった。東京高裁は、36協定の限度基準告示を上回るが、残業を実際に義務付けるものではないと判示。告示は労働契約を補充する効力を有さず、手当に通常の労働時間の対価は含まないとしている。通常の労働時間と判別でき、差額精算の合意も不要とした。
労働義務生じない 判別要件も満たす
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審被告は、結婚式場の経営等を目的とする会杜であり、一審原告は、平成24年8月、被告と期間の定めのない雇用契約を締結し、営業およびウエディングプランナーの業務に従事し、平成27年5月に退職した。一審原告は、未払い賃金、付加金等の支払いを請求し、原判決(水戸地裁土浦支判平29・4・13)は、法内残業代87万円余、時間外割増賃金224万円余、付加金155万円余等の請求を認容したところ、両当事者が控訴した。
判決のポイント
給与規程19条は、表題を【定額残業制導入の趣旨】とした上、職能給を「時間外割増、休日割増もしくは深夜割増の前払いとして支給する手当」、同規程16条は、職能給を「社員個人の職務遂行能力を考慮し加算される時間外割増、休日割増もしくは深夜割増として支給する手当」と定義しており、同規程に定める職能給は職能手当を指す…。本件雇用契約書においても、職能手当は、「時間外割増、深夜割増、休日出勤割増としてあらかじめ支給する手当」であるとし、「法定割増の計算によって支給額を超え差額が発生する場合は、法令の定めるところにより差額を別途支給します」としている…(編注:給与規程の規定と雇用契約書の合意を併せて「本件特約」)。…規程19条は…「法定外」に限定する文言はなく…、本件雇用契約書も同様であるから、職能手当には、法内時間外労働手当も含むと解される。…
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