社会福祉法人どろんこ会事件(東京地判平31・1・11) 年収1000万円で採用した部長の本採用拒否 期待した「管理能力」を欠く
年収1000万円超で中途採用された部長が、3カ月の試用期間後の解雇は無効と訴えた。東京地裁は、経歴から高いマネジメント能力を期待されていたが、高圧的な言動を繰り返し協調性を欠くなど本採用拒否を相当と認定。突然部下に降格をほのめかしパワハラと通報されたほか、経歴も一部虚偽だった。即戦力採用で、問題行動の改善指導がなくても判断に影響を及ぼさない。
改善指導なくても 経歴にも虚偽あり
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y法人は、保育所や障害児通所支援事業の社会福祉事業等を行う社会福祉法人であり、首都圏を中心に、認証保育園であるどろんこ保育園や発達支援施設つむぎを運営する法人である。
平成28年11月1日、Y法人とXとの間で、期間の定めのない労働契約(以下「本件労働契約」)が締結された。本件労働契約は、試用期間を入社時より3カ月とし、業務内容は、発達支援事業全体のマネジメントおよびY法人全体の事業推進の寄与とされていた。
平成28年12月1日、Y法人はXに対し、自宅待機命令を出し、同月28日、「本採用拒否の通知」と題する書面にて、平成29年1月31日付で本採用を拒否する旨を通知した(以下「本件本採用拒否」)。
平成29年1月26日解雇理由書によれば、Xが上司との関係において、適切な報告・相談を繰り返し怠り、部下との関係でも、適切な意思疎通を図ることを怠り、職員に対しXに対する不信感、恐怖心を抱かせ、部下からパワハラであるとして内部通報・外部通報をされるという事態に至り、さらにはY法人が不正行為を行っているという虚偽の事実を流布する等、他の職員の業務遂行に悪影響を及ぼし、協調性を欠くなどの言動が認められること、および、Xの提出した履歴書記載の職歴のうち、事実に反する不適切な記載が確認されたことから、Y法人がXに期待した適格性を欠くものと判断したということが、本件本採用拒否の理由とされていた。
Xは、Y法人を相手に、本件本採用拒否による解雇は無効であると主張し、雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、判決確定日に至るまでの未払賃金(月額83万4000円)およびこれに対する遅延損害金(年5分)の支払いを求め、提訴した。
判決のポイント
本件本採用拒否は、…
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