近畿大学事件(大阪地判平31・4・24) 男性講師が9カ月育休、定昇なく損害賠償請求 就労期間あり昇給停止違法
2019.12.05
【判決日:2019.04.24】
育休を9カ月間取得した男性講師が、定昇が行われず損害賠償を求めた。大学では、前年度12カ月勤務した者を1号俸昇給させていた。大阪地裁は、昇給は在籍年数に応じた年功賃金的な制度としたうえで、育休以外は就労し、功労を一切否定するのは不合理と判断。不法行為が成立するとした。私傷病休職等で昇給が抑制されていたとしても、育休の不利益取扱いは否定されない。
年功賃金的な趣旨 不利益扱いに該当
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y大学の講師であるXは、平成27年11月から翌年7月まで育児休業(以下「育休」)を取得したが、規程上、昇給には原則12カ月の勤務が必要であり、育休その他の休職期間は昇給に必要な勤続期間に算入しないとされていたため、平成28年4月1日の昇給が行われなかった。また、平成24年の採用時に、採用前の経歴の一部を減年するなどして換算した基準年齢から初任給が決定されていたが、この減年部分等について、勤続5年経過時に再調整措置(以下「減年調整」)が行われなかった。さらに、育休をしたことを理由に既払いの増担手当の返還を求めたこと、育児休業給付金の申請手続を遅滞させたことがあり、Xは、いずれも不法行為に該当すると主張し、損害賠償として、昇給および減年調整がそれぞれ実施されていた場合の賃金および賞与額と現実の支給額との差額並びに慰謝料等を請求して提訴した。…
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令和元年12月9日第3236号14面 掲載