学校法人Y学園事件(名古屋地判令元・7・30) 教授に懲戒歴あり65歳定年後の再雇用拒否は? 定年に雇止め法理類推適用
元教授が譴責処分を理由に、65歳定年後の再雇用を拒否されたのは無効として賃金支払等を求めた。規程で懲戒処分を受けた者を再雇用しない旨定めていた。名古屋地裁は、懲戒事由とされた情報漏えいは認められず処分無効としたうえで、雇止め法理を類推適用。過去、ほぼ全員が68歳の限度まで再雇用されており、給与規程に基づき定年時の俸給を適用し3年分の賃金支払いを命じる。
68歳まで継続期待 譴責処分は無効で
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Xは、Yの設置するY大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年(65歳)に達した。本件は、XがYに対し、再雇用を希望する旨の意思表示をしていたのにYがこれを拒否したのは正当な理由を欠き無効であり、再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認および同年4月以降毎月末日限り月額賃金75万5040円の支払等を求める事案である。
Xは、昭和27年生まれの男性であり、昭和63年4月1日、Yから雇用された。平成28年11月1日時点におけるXの雇用条件は、期間の定めなし、職種は教授、賃金は月額75万5040円(うち俸給63万700円)であった。なお、Xは、平成26年4月1日~28年3月31日まで、Y大学大学院人間文化研究科B専攻主任を併任していた。
就業規則では、教育職員の定年について、大学院教授を満70歳、それ以外の者を満65歳と定めている。
Y大学職員規則では、大学院教授以外の教育職員の定年退職者を教育職員として再雇用でき、任期は、満68歳に達する年の学年度末を限度とし、とくに必要のある場合、満70歳に達する年の学年度末を限度とする旨定めている。
Y大学教育職員の再任用に関する規程では再任用の候補者となることができる教育職員につき、Y大学就業規則に基づく懲戒処分を受けた者については再任用しない旨定めている。
さらにY大学給与規程では、Y大学職員規則13条1項により採用された職員の俸給は、その定年年齢に達した年度末の俸給号俸を固有号俸とし、昇給を行わない。ただし、担当する業務の程度により、適宜減額することがあるとしている。
Yは、Xに対し、平成28年11月、懲戒処分として譴責処分(以下「本件処分」)をした。
Xは平成28年9月、Yに対し定年後再雇用の希望を提出していたが、Yは本件処分を受けたことを理由として再雇用を拒否した。
本件の主な争点は①Xに懲戒事由該当性があるか、②本件処分の相当性、③定年後再雇用の黙示の合意の有無または本件再雇用拒否が権利の濫用に当たるかであるが、③について紹介する。
判決のポイント
労働者において定年時…
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