恩賜財団母子愛育会事件(東京地判平31・2・8) 割増賃金求める医師に病院が「管理職手当返せ」 不当利得返還請求を命じる
医長である医師が残業代を請求したところ、逆に病院から管理職手当の返還を求められた。医師には、時間外見合いの医師手当も支給されていた。労基署から残業代に関して是正勧告を受けるなど管理監督者でないことに争いはなかった。東京地裁は、内規に時間外労働等の対価と規定された医師手当を固定残業代と認めた一方、医長に管理職手当の受給権限はないとして不当利得の返還を命じた。
管理監督者でなく 医師手当は残業代
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、平成17年4月1日に被告財団に入職した医師であり、平成26年4月以降新生児科医長として勤務し、未払割増賃金4392万余円、労基法114条に基づく付加金等を請求した。被告財団は、反訴として、原告に受給資格のない管理職手当を過誤払いしたと主張して、不当利得返還請求権に基づき157万余円等を請求した。
判決のポイント
本件給与規則上、諸手当のうち超過勤務手当と医師手当が同列のものとして整理、理解されているものと評価できる。また、…医師手当支給内規には、…管理職以外の医師については医師手当を超過勤務に代わるものと規定し、医師手当が固定残業代であることが明記されている。さらに、超過勤務手当支給内規においても、医師の超過勤務、休日勤務に係る手当として、労基法上の時間外労働等…の合計時間を超過勤務として計算した額と、医師手当及び宿日直手当の合計額を比較して多い方の額を支払うこととされており、実際に被告財団は、前者の方が多い場合には医師手当及び宿日直手当の合計額との差額を医師差額として支給している。…医師に対する宿日直手当と医師手当がいずれも時間外労働等に対する対価としての手当として位置付けられ、労働基準監督署からの勧告等を受けるまではこれらの手当を支払うことにより時間外労働等に対する対価としての賃金を支払ったものとして処理されていたものの、同勧告を受け、労基法等の法令に従った形に運用を改めたものと理解するのが相当である。
医師手当は、…
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