中央学院事件(東京地判令元5・30) 非常勤講師が手当や賞与なし不合理と賠償請求 「基本給3分の1」も認める
非常勤講師が、専任教員との基本給に約3倍の差があり、家族手当や賞与などもないのは不合理と損害賠償を求めた。東京地裁は、職務内容や責任に相違があるうえ、他校の賃金水準より低いといえず団交で待遇は改善されていたと評価。幅広い業務に応じた責任を負う専任教員にふさわしい有為な人材を確保する必要性があり、家族手当などを手厚くすることも合理性がないとはいえない。
団交で待遇は改善 有為な人材必要に
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、中央学院大学等を設置し、運営する学校法人である。
被告との間で期間の定めのある労働契約を締結し、当該労働契約に基づいて本件大学の非常勤講師として現に就労している原告が、被告との間で期間の定めのない労働契約を締結している本件大学の専任教員との間に、本俸の額、賞与、年度末手当、家族手当および住宅手当の支給に関して、労働契約法20条の規定に違反する労働条件の相違がある旨を主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償等を請求した事案である(他に専任教員の契約締結段階に入ったとの争点もあるが、事実認定の問題なので以下労契法20条の争点に絞る)。
判決のポイント
1、基本給
非常勤講師と専任教員との間には、本俸額について約3倍の差があったものと解される。しかしながら、そもそも、非常勤講師と専任教員との間には、その職務の内容に数々の大きな違いがあるものである。…非常勤講師の賃金水準が他の大学と比較しても特に低いものであるということができないところ、本件大学においては、団体交渉における労働組合との間の合意により、非常勤講師の年俸額を随時増額するのみならず、…その他非常勤講師の待遇についてより高水準となる方向で見直しを続けており、原告の待遇はこれらの見直しの積み重ねの結果であることからすると、原告が本件大学においてこれまで長年にわたり専任教員とほぼ遜色ないコマ数の授業を担当し、その中に原告の専門外である科目も複数含まれていたことなどといった原告が指摘する諸事情を考慮しても…
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