N商会事件(東京地判平31・4・19) 交際求めるメールはセクハラ、会社に厳罰要求 懲戒処分までは不要と判断
メールで再三交際を申し込む行為はセクハラであり、会社の対応は不十分として、元従業員が会社に損害賠償を求めた。行為者の懲戒解雇や自身の配転を求めたが行われなかった。東京地裁は、相談後まもなく事実関係を調査したと評価。ストーカー行為に当たらず、謝罪を受け入れるなど、懲戒処分は不要と判断しても不合理とはいえないとした。配転に関しても、本社建物しかなく困難としている。
調査義務違反なし 注意と謝罪で解決
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Yは、役員3人、従業員12人、1事業所の会社である。同社の従業員Xは、平成24年10月下旬ころ、従業員Aから交際を申し込まれたが、回答はしなかった。Aは、その後も、メールの送信や、旅行の土産を渡すなどしたが、Xが返信しないばかりか、冷たい態度を示すようになったため、翌年3月中旬以降、交際を求めるようなメールは送らなくなった。
XとAはフロアも異なり、業務として接触するのは納品伝票の受け渡し程度であったが、Xは同年9月頃、Aとの接触を避けるべく担当を交代できないかと申し出た。取締役営業部長Bが、Aに事実確認を行ったところ、Aは、過去にメールを送ったことがあるが、現在はしていないと述べ、BはAの携帯で確認した。BはAに対し、今後、メールを送るなどしないように注意し、謝罪するよう指導した。Xはその後、自身の配置転換や業務内容の変更、Aの懲戒処分や退職を求めるようになり、Yは、両者の業務上の接点を減らすようにしたが、Xは、Aの懲戒解雇に固執し、Yの慰留にもかかわらず平成28年9月、退職した。
Xは、Yが事実関係の調査をせず、安全配慮義務ないし職場環境配慮義務を怠ったこと等により精神的苦痛を被ったと主張して、債務不履行に基づき、損害金約904万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めて提訴した。
判決は以下のように判示し、Yに義務違反はなく債務不履行責任を負うことはないとした。…
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