食品会社A社事件(札幌地判令元・6・19) 採用した障害者自殺、仕事少なくうつ病悪化? 業務量の調整義務違反なし

2020.02.27 【判決日:2019.06.19】
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 少ない業務量しか与えられず、うつ病を悪化させ自殺したとして、遺族が会社に損害賠償を求めた。札幌地裁は、業務量増加の要望を受けた上司は、安全配慮義務として心理的負荷の有無や程度を検討して対応すべき義務を負うが、会社は相談を放置せず対応していたと同義務違反を否定。上司が採用の理由を「障害者雇用率のため」と発言したことは配慮を欠くが、自殺との相当因果関係は認められない。

相談放置せず対応 言動は配慮欠くも

筆者:弁護士 岩本 充史

事案の概要

 本件は、Yでの勤務開始当初からうつ病にり患していたBが自殺した事案である。自殺した原因は、Bの上司(D)の発言およびYがBの要望に応じて業務量を増加させなかったことなどにより、極度に強い心理的負荷を与えられたBがうつ病の程度を悪化させたことにあるとして、Bの母であるX1が、Yに対し、損害賠償等の支払いを求めた。

 事実関係

 Bは、Yに就職する前に書店で就労していたが、うつ病を発症し、就労に困難を感じるようになったため、特定非営利活動法人Iを訪れ、転職の相談をした。担当したJ1は、平成24年10月30日、Bが関心を持ったYのDらに対し、うつ病にり患していることを含め、文書による情報提供を行った。その際J1は、Bが障害者手帳(3級)を所持しているものの、就業には問題がないといわれていることおよび配慮を要する点を記載した。その後、Bは同年11月12日、Yでの勤務を開始した。

 (1)平成25年4月19日、BはDに対し、話があると泣きながら話しかけてきた。その内容は仕事が少なくて辛い、このままでは病気を再発してしまいそうである、Bを雇用する必要がないのではないかと述べた。その際Dは、Bの雇用が「障害者の雇用率を達成するため」という本件発言をした(既に法定雇用率を上回っていたが、伝えなかった)。

 (2)Bは、同年5月23日、J1に対し、同日は2時間半にわたって何もすることがなく、インターネットを眺めていたが、何もいわれなかったこと、休憩室で寝ていても、誰にも何もいわれないのかもしれないこと、やるべきことが思い付かないことなどを内容とするメールを送信した。

判決のポイント

(1)本件発言がDの注意義務違反に当たるか

 「Dは…

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令和2年3月2日第3247号14面 掲載
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