G社事件(東京地判平31・2・25) 即戦力採用の証券マン、試用満了で解雇される 多数回指導もミス繰り返す
即戦力として中途採用された証券アナリストが、3カ月の試用期間満了による解雇は無効と訴えた。東京地裁は、募集要項にある金融当局への正確な報告書作成が期待されていた中で、致命的なミスを繰り返し、多数回の指導を行ったものの有意な改善はみられなかったと判断。会社は一時期、連日のように面談するなどして問題点を指摘し、ミスの原因を事情聴取していた。
面談行い原因聴取 有意な改善はなく
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は昭和60年に出生した男性、被告は不動産の賃貸借等の事業を行う会社である。
平成27年1月ころ、被告は、同社オペレーションズ部門のレギュラトリー・オペレーションズ部で勤務(出向)する人材を募集した。
募集要項には、①責任として、日次、週次または月次での当局宛て報告書の作成またはその正確性の確認等、②基本的資質として、大学卒以上、金融業務における5年以上の実務経験、複雑な金融商品・機能に関するデータ分析、情報技術、業務運営プロセスおよびコンプライアンス等の業務経験が求められることが記載されていた。
原告は、中途採用者として上記募集に応募し、被告に対し、信託銀行においてファンド取引のトレーダー業務などに従事した職務経験を有する旨の履歴書を提出した。
その後、原告と被告は、(ⅰ)期間の定めなし、(ⅱ)試用期間3カ月、(ⅲ)所属本件オペレーションズ部門、(ⅳ)職位アナリスト2、(ⅴ)賃金670万円を内容とする労働契約を締結し、平成27年7月10日に入社した。なお、就業規則には、「試用期間対象者を社員として勤務させることが不適当であると決定した場合には…解雇する」旨が規定されている。
原告の配属場所は、監督官庁または取引所の法令等により定められた定期的な報告書の作成・提出等(大量保有報告書等の作成やその作成の要否を判断するための基礎となるデータの収集・突合・分析・検討・関係部署への報告)を主に担当する部署であった。
しかし、原告は、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら