学校法人追手門学院事件(大阪地判令元・6・12) 退職勧奨を拒否後の降格不当と差額賃金求める 低評価に人事権濫用認めず
退職勧奨に応じなかったため、不当に降格されたとして事務職員が、減額された月6万円の支払いを求めた。賃金は職能給のみで構成され、規程では2年続けて下から2番目の評価の場合、降格を審議すると定めていた。大阪地裁は、業務は職務等級に見合う十分な基準に達しておらず、上司等から何ら注意を受けなかったとも認め難いことなどから、評価に人事権の濫用は認められないとした。
等級下げる旨規定 職能給のみで構成
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y法人は学校法人である。Xは、平成2年にY法人に採用され、平成25年4月~同26年3月まで総合情報センター情報メディア課で勤務した後、同27年4月には中・高等学校事務室に配属され、同28年11月からは総務室財務課において、主に管財業務を担当していた。
Y法人の事務職員は職能給とされ、その額は等級と号給に基づいて定められていた。等級は1等級から8等級に区分され、下位等級への降格については、人事評価の結果が2年連統でB評価(6段階評価で下から2番目)以下の場合、事務職員人事委員会において審議を行い決定するとされていた。人事評価は、各人の重点業務(目標達成度5段階)40%、日常業務(達成度5段階)20%、職務遂行能力(能力の程度5段階)20%、勤務態度(達成度5段階)20%の4要素で行われ、所属長を一次評価者、統括部署の長を二次評価者とし、点数換算により、上位からSS、S、AA、A、B、Cの6段階で評価されることとなっていた。
Xについては、平成27年度は、重点業務1(スクールバス運行経費削減のための施策を具現化)、重点業務2(在学生・卒業生から受験生へのメッセージを募ってホームページに掲載)、重点業務3(予算査定の場で提言)のいずれも実現できず(重点業務はいずれも5段階中2)、日常業務は、評価要素である(以下同じ)仕事の迅速性・正確性・計画性・共有性のいずれも5段階中2、職務遂行能力は、専門力・対人力・判断力のいずれも5段階中3、勤務態度は、規律性・責任性・協調性および積極性のいずれも5段階中2との評価がなされた。
Ⅹは、平成28年度も、同27年度と同様に、重点業務、日常業務、職務遂行能力、勤務態度について、各個に低評価がなされた。
前述の評価により、Xは平成27年度、同28年度で2年連続B評価となり、同29年4月1日付で降格され(以下、「本件降格」)、本俸月額が44万3300円から38万1800円に下がった。
前述の評価に至るXの業務遂行に関するXの言動としては、…
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