ジャパンビジネスラボ事件(東京高判令元・11・28) マタハラ企業だと社名公表した女性に賠償請求 記者会見の内容は名誉毀損
マタハラを受けたとして記者会見で社名を公表した元従業員の女性に対し、会社が損害賠償を求めた。一審は請求を斥けたが、東京高裁は、発言のほとんどは事実と異なるとしたうえで、一般人が報道に接したときの「普通の注意と読み方」を基準にすると、発言には根拠があり、事実と受け止める人がいることは否定できないと判断。社会評価や名誉・信用を毀損したと50万円の賠償を命じる。
報道と事実異なる 社会的評価が低下
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
乙事件において、一審被告Y社は、育児休業期間が終了する一審原告Xとの間で平成26年9月に締結した契約期間1年の契約社員契約は、期間満了により平成27年9月に終了したとして、Xが労働契約上の権利を有する地位にないことの確認を求めた。
甲事件本訴において、XはY社に対し、①平成20年7月付け正社員契約が存続しているとして、正社員の地位確認等を求め、②予備的に、本件雇止めは無効であるとして、契約社員の地位確認等を求め、③Y社の一連の行為は違法であるとして、不法行為に基づき、慰謝料300万円等の支払いを求めた。
甲事件反訴において、Y社は、Xが平成27年10月に行った記者会見で内容虚偽の発言をし、Y社の信用等が毀損されたと主張して、不法行為に基づき、慰謝料300万円等の支払いを求めた。以下、主にこの争点を取り上げる。
一審(東京地判平30・9・11、本紙3213号)は、乙事件の訴えを却下し、甲事件本訴については、雇止めは無効として、契約社員としての地位確認請求を認容し、不法行為に基づく損害賠償請求について、契約準備段階における信義則上の義務違反があるとして、慰謝料100万円等を認容した。Y社の甲事件反訴請求については、Xの記者会見における発言のみではY社の名誉・信用が毀損されたとは認められないとして請求を棄却した。…
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