国・品川労基署長事件(東京地判令元・8・19) パワハラ原因で適応障害になったと労災を請求 口調厳しいが指導の範囲内
上司のパワハラ等で適応障害を発症したとして、労災保険給付の不支給処分の取消しを求めた。東京地裁は、本人ができるようになるまで上司が根気強く指導する中で、「あほ」など口調が厳しくなったが業務指導の範囲内であり、仮に逸脱する部分があったとしても嫌がらせ等とはいえず、心理的負荷の強度を「中」とした。その他、上司が頭をはたいた行為は、発症から1年半も前だった。
嫌がらせなど否定 暴力は半年以上前
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者甲は、防音の装置等の設計および施工等を営むA社と平成24年4月付で雇用契約を締結し防音ハウスや防音壁の見積り等の営業業務を担当していた。同25年10月18日以降、連続して休暇を取得するようになり、同26年7月30日付で休職期間満了を理由に自然退職扱いとなった。
甲は上司からサービス残業や独占禁止法に違反する行為を強要されたり、パワーハラスメントを受けたりしたこと等によって抑うつ状態・適応障害(本件疾病)を発病し休業に至ったものであるとして、所轄の品川労働基準監督署長に対し、労災法の休業補償給付の請求をしたが、休業補償給付を支給しない旨の各処分(本件不支給処分)をし、さらに東京労災保険審査官においても本件各不支給処分に係る審査請求について棄却の決定をした。そのため、甲は、平成29年8月7日、本件各処分の取消しを求めて、本件訴えを提起した。
本件の争点は、甲の本件疾病が、業務上のものといえるか、という点にある。本判決はおよそ以下のように判示して、甲の請求を斥けた。…
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