京都市(児童相談所職員)事件(京都地判令元・8・8) 社外へ個人情報持ち出し廃棄、3日間の停職は 公益通報が目的で処分重い
児童相談所の職員が、児童の記録をコピーして自宅に持ち帰り破棄したことで、3日間の停職とされた処分は無効と訴えた。京都地裁は、相談を放置した児相の対応を問題視し公益通報窓口に相談しており、資料持ち出しは証拠保全や自己防衛という重要な目的を有していたと判断。資料の外部流出は認められず、過去の懲戒事例との比較や処分歴もないことから停職3日は重すぎるとした。
外部流出も認めず 過去に懲戒歴なし
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、地方公共団体(市)で、原告は、被告が設置する児童相談所に勤務していた。
平成27年9月8日、被告市内の児童養護施設の施設長Aが同施設に入所していた被措置児童を平成26年8月に淫行させたものとした逮捕された。児童相談所は、本件児童の母親から、平成26年8月20日から相談を受けていたが、このときは、被措置児童虐待通告として受理しておらず、同年12月24日になって、保健福祉局に被措置児童虐待事案として報告した。
同年10月1日頃から、原告は、勤務時間中に、職場の業務用パソコンから、本件児童の記録データ等を閲覧したところ、同年8月に本件児童の母親から相談があったことを知ったため、その後も閲覧を繰り返し(本件行為1)、その後の新年会の席上や組合交渉の場で、児童相談所の対応を問題視する発言を行ったほか(本件行為3)、平成27年3月15日に被告の公益通報処理窓口であるH弁護士に通報した。しかしその回答内容に不服があったため、原告は、同年10月頃、職場の業務用パソコンから、本件児童の母親からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1頁を出力し、複数枚複写した。その内の1枚を自宅に保管していたところ、平成27年11月10日、保健福祉局の事情聴取において返却を指示されたが、その日の夜、自宅でシュレッダー廃棄した(本件行為2)。なお複写文書のうち1枚は原告が、H弁護士に交付した。
同年12月4日、被告は、本件行為1~3を理由に原告を3日間の停職とする懲戒処分をした。そこで、原告は本件懲戒処分の無効を求めて訴訟提起した。…
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