青森三菱ふそう自動車販売事件(仙台高判令2・1・28) 残業少なくうつ病自殺と関連否定した一審は 労災認定後に会社責任認容
うつ病を発症して自殺したのは、長時間労働が原因として遺族が会社に損害賠償を求めた。残業時間数は月平均80時間を下回るなどとして、請求を棄却した一審後に、適応障害と労災認定されていた。二審は労災認定を不合理ということはできないと判断。発症後に決算月があり長時間労働が続いたと推認し、その間先輩の叱責に過敏に反応して自殺したとして、一審を覆し賠償を命じた。
発症後も「繁忙」で先輩の叱責が影響
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、自動車の仕入販売および修理等を目的とする株式会社である。
甲(平成6年10月18日生まれの男子)は、平成27年4月1日に会社に雇用され、八戸営業所において、自動車整備作業等に従事していた。
A所長は、同営業所の所長の地位にある者、B課長代理は整備課に所属していて、いずれも甲の上司の地位にあった者である。
会社の就業時間は午前8時30分から午後5時までの7時間30分(休憩時間1時間)で、1年単位の変形労働時間を採用していた。同営業所では、労働時間の管理は各従業員が就業時間報告書に始業・終業時刻を自ら記入して毎日提出し、上司の確認印を受けるという方法で行われ、タイムカードはない。
甲は、平成28年4月16日(土)午後0時30分頃、同営業所に設置された天井クレーンの先につながれていた金属製のワイヤーに首をつった状態で発見された。甲は、八戸市立市民病院に心肺停止の状態で救急搬送され、心肺蘇生入院したが、同年5月9日、低酸素脳症を原因として死亡した。
甲の相続人遺族は、「勤務先であった同営業所における違法な長時間労働が原因でうつ病にり患し、首つり自殺をした。そして、甲に対する業務上の指揮監督権限を有する上司AまたはBが、甲に対する違法な長時間労働を軽減する措置をとらなかった過失または安全配慮義務違反があった」等と主張して、甲の損害賠償請求権を相続した遺族が、会社に対し、不法行為責任または雇用契約上の債務不履行責任に基づき、固有の損害を含め、9000万円余の損害賠償を求めて訴えを提起したものである。
一審判決(青森地裁八戸支判平30・2・14)は、甲の長時間労働とうつ病のり患ならびに自殺との相当因果関係を認めず、甲の遺族の請求をいずれも棄却したため、控訴を申し立てた。一審判決後の平成30年12月、八戸労働基準監督署長は、甲は平成28年1月上旬に業務に起因して適応障害を発症し、これに起因して自殺に至ったとして労災認定を行った。本判決は、以上の事情を受けての二審判決である。
本判決はおよそ以下のように判示して、原判決を取り消して、会社の責任を認容した。…
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