北海道二十一世紀総合研究所ほか事件(札幌高判令元・12・19) うつ病は労災、配慮怠ったと賠償命じた一審は 長時間労働のみで予見困難
月100時間超の残業などでうつ病を発症したとして労災認定された研究員が、会社に損害賠償を求めた事案の控訴審。請求を認めた一審に対して札幌高裁は、業務の質や量は過大といえず裁量性もあること、業務が困難と上司らへ申告相談がなかったことも踏まえ、長時間労働のみをもって発症を予見できないと判断。担当は調査業務のみで業務量を減らすのも困難としている。
上司らへ相談なく 業務に裁量性あり
筆者:弁護士:岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y1社は、昭和48年9月にエンジニアリングセンターとして設立された株式会社であり、平成10年12月に現在の社名に商号変更され、官公庁等からの受託調査研究、株式会社北洋銀行からの業務委託および経営コンサルティングを主な業としている。
Xは、平成8年4月からY1社に正社員として入社し、同9年6月以降、Y2(以下、Y1社と総称する場合は「Yら」という)の直属の部下となった。
平成17年2月~18年1月において、Xは時間外労働が80時間を超えた月が6カ月、100時間を超えた月が4カ月あり、とくに平成17年3月は171.2時間、12月は151.5時間の時間外労働に及んだ。
平成18年1月20日、Xはうつ病を発症し、同年2月21日頃~10月31日まで休職した。11月1日、週3日勤務の条件で復職し、遅くとも平成21年7月以降、週5日勤務となった。
平成25年7月9日、Xは札幌中央労基署に対して労災認定の申請を行い、平成26年1月31日、同労基署はXの疾病の業務起因性を認め、労災認定を行った。
平成26年5月7日~11月7日、Xは休職辞令を受けて休職した。
XはY1社における過重労働が原因でうつ病になったところ、Y1社に安全配慮義務違反があると主張して、損害賠償の一部請求として、平成18年1月~30年12月までにY1社から賃金を減額され、また、本来ならば昇給していたであろう分も、支給されなかった賃金分や逸失利益(後遺障害による)等を含めた損害として、8271万8752円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めるとともに、Y1社の労務管理の不備およびY2の嫌がらせ等が不法行為に該当するとして、慰謝料およびこれに対する遅延損害金の支払いを求め、Y1、Y2を提訴した。
一審(札幌地判平31・3・25)は、…
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