北海道・道労委事件(札幌高判令元・8・2) 完全歩合制拒んだ組合員に時間外させず違法か 残業制限は不当といえない ★
完全歩合給への変更に同意せず残業が認められなくなったとして、タクシー会社の組合員が不当労働行為と訴えた事案の控訴審。救済申立てを棄却した道労委の判断を一審は支持していた。札幌高裁も、組合員であるか否かは関係なく残業等を禁止したものであることから不当労働行為を否定。団交を18回行うなど、会社は経営状況から制度変更の必要性があることを説明していた。
全従業員が対象で 団交18回行い説明
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告補助参加人は、タクシー事業を行う会社で、原告は、会社の乗務員等によって結成された労働組合である。平成27年当時、会社には、原告のほかに3労組があった。
平成26年10月、会社は、原告に対し、銀行から経営の再建計画を迫られているなどとして、賃金制度を改める必要があることを説明し賃金の引下げと賃金体系を歩合給に変更することについて団体交渉を申し入れた。その後、原告との間で18回にわたって団交および事務折衝を行い、賃金改定案を示すとともに、会社の決算書類を示す等して、経営状況の説明を行ってきたが、原告は、労基法に反しているとか、解決金の支払いを求める等して、新賃金体系等の受け入れを拒んだ。
一方、会社は、平成27年5月11日、全乗務員に対し、新たな賃金体系が決定するまでの間、協定外残業(編注:勤務シフトに組み込まれず、会社の指示ないし事後の承認に基づいて行われていた残業)を禁止する旨を告知して禁止するとともに、同年7月11日および18日には、同月21日からの新賃金体系の実施と同賃金体系に同意しない乗務員には、協定外残業・公出出勤・シフト変更の禁止を求める文書を点呼室に掲示した。併せて、7月21日までには3労組との間でも新賃金協定を締結した。
同日、会社は、乗務員約560人のうち、新賃金体系に同意の得られなかった原告の組合員16人を含む27人の乗務員に対しては旧賃金体系を適用するとともに、協定外残業・公出出勤・シフト変更を認めなかった(本件取扱い)。
原告は、北海道労働委員会(被告)に対し、本件取扱いが不当労働行為に該当すると主張して救済申立てをしたが、被告は棄却した。一審(北海道地判平30・12・14)が同命令の取消請求を棄却し、本件はその控訴審である。…
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