石崎本店事件(広島地判平8・8・7) 中途採用の賃金、男子は年齢・女子は高卒 女子に損害賠償認める
1997.01.27
【判決日:1996.08.07】
女子を理由とする不合理な差別
筆者:弁護士 開原 真弓(経営法曹会議)
事案の概要
自動車用ガラスの加工に従事している女子従業員が、中途採用の初任給につき、男子は年齢のみを基準としているのに、女子には年齢を考慮せず、高卒女子の初任給を支給、これを基準に毎年の基本給が、それを基準に時間外割増及び賞与が決定されているのは、女子であることのみを理由とした賃金の差別であるから、労働契約は賃金に関する部分に限り無効となり、男子と同等の初任給で決定、計算された賃金の支払」相求権を有するとして、会社に対し、男女を平等に扱う債務の不履行、不当利得、予備的に不法行為をも根拠として、原告と同年齢、同時入社の男子に支給されたはずの賃金との差額の支払い及び精神的苦痛の慰謝料を請求し、今後の差別防止のため、現在支給されるべき基本給月額の確認を求めたものである。
被告会社は次のように主張して争った。中途採用者の初任給は学歴、能力、経験、技能、作業内容などを勘案して各人毎に決定されており、女子であることを理由とした賃金差別ではない。原告が賃金算定の基準とする男子従業員は、経験工であり、素人工である原告との間には右の諸要素に格差があり、賃金算定の基準とはならない。
判決のポイント
裁判所は男子従業員との差額賃金請求権、債務不履行、不当利得の主張を退けたが、…
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平成9年1月27日第2138号10面 掲載