岩手県交通事件(盛岡地裁一関支部判平8・4・14) 不正取得での懲戒の根拠に 繁忙期の出勤要請拒否し、生理休暇を取得
月経困難症の証拠なく、長時間の旅行
筆者:弁護士 安西 愈
事案の概要
本件は、バス会社の貸切バスガイドが、会社の指示等に反し業務繁忙期に休暇等を取得して民謡大会等に出場ないし出演したことにより、懲戒処分として6カ月間の休職等の処分を受けたため、その無効確認及び休職期間中の給与の支払いを請求した事案である。
事件は4件ある。①原告が、平成4年10月18日開催の民謡大会に出演するため年休の取得を請求したところ、営業所長との間で、被告所定休日の同月14日は出勤し、18日を代休とすることで合意していたが、貸切バスのガイドの手配がつかなかったので、所長は代休の延期を要請、原告はこれを拒否し、同日出勤しなかった。この休日の変更について裁判所は、合意により代休として一旦定められた休日であるから一方的な変更はできないと判示した。
②同年10月25日の民謡サークル主催のチャリティーショー出演のため年休を請求したところ、営業所長は同日の4、5日前に、同日の勤務を要請した。原告はこれを拒否し、休暇をとった。この時季変更について裁判所は、最も繁忙な時季であり、原告が乗務しなければ同日がいわゆる分断運行となる見込みがあり、現にそうした結果となったことなどに鑑みると、右時季変更権の行使は正当で、懲戒処分の根拠にできるとした。
③同年11月15日の民謡大会に出場するため年休を請求していたところ、会社は、貸切バス運行業務が数口入ったため、就労を要請したが、同月13日生理となったため、同月14日から16日まで生理休暇を取りたい旨電話連絡し、右民謡大会に出場した。本件については、原告の取得は不当とし、懲戒処分の根拠となると判示した。
④同年12月6日の結婚披露宴に出演する目的で、被告所定の特定休日の取得を請求していたところ、2日前になって営業所長が同日の勤務を要請、原告はこれを拒否し、右披露宴に出演した。裁判所は、年間休日日数中5働1休制により付与される定型日数の残休日で、労働者の指定がなされた後は使用者は一方的にこれを変更できないと判示した。
判決のポイント
本件の懲戒処分は右に述べたとおり4件あり、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら