西福岡自動車学校事件(福岡地判平7・9・20) 賃上げ交渉促進を目的に腕章着用で就業 職務専念義務に違反する ★
明示、黙示の承諾 労使慣行あれば別
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
X労働組合は、平成2年5月19日、公安委員会の指定を受けて自動車教習所を経営しているY社に対し、前日の第3回団体交渉終了後の職場集会において、賃上げ交渉の促進などを目的として腕章を着用して就業すること(以下「本件腕章着用闘争」という)などの闘争方針を決定したので、それを通告した。
そして、午前10時から、X労組の組合員は同労組名を記載した塾早を左上腕部に着用して就労した。
これに対し、Y社はX労組に対して、同日午前11時及び午後1時に、口頭で腕章の取り外し等の警告を行い、同日午後2時30分には、同日午後3時までと時間を切って同様の警告を行った。加えて、Y社は同組合員らに対して、本件腕章着用などの闘争は就業規則に違反する行為であって懲戒処分の対象となる旨を口頭、文書、さらにY社内の黒板に記載する方法で、繰り返し警告した。
Y社は、同年9月19日、賞罰委員会を開催し、X労組の組合員の春闘における本件腕章着用闘争等に対する処分について検討し、同組合員23名の同年5月19日から同年9月10日までの間の本件腕章着用闘争及び再三の指示・警告にもかかわらず腕章着用を中止しなかった行為について戒告処分をすることとし、同月25日付けで、同組合員らに対し通告した。
X労組は福岡県労働委員会に対して、平成3年8月19日、Y社の右懲戒処分は不当労働行為であるとして、その救済を求める申立てをした。
同労働委員会は、右申立てを一部認容する旨の救済命令を発したので、Y社は、その取り消しを請求して提訴した。
判決のポイント
一般に、就業時間中の腕章着用は、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら