東映視覚事件(青森地弘前支判平8・4・26) 企業のかけた死亡保険金と遺族への配分 全額支給する必要はない
1997.03.03
【判決日:1996.04.26】
企業内のルール化 従業員との合意を
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、取締役Xの遺族が、Xの病死により会社が取得した保険金の支払い、または保険金と同額の死亡退職金及び弔慰金の支払いを求めた事案である。会社は、役員・従業員の福利厚生や退職金・退職慰労金の準備のため、各種の保険に加入していた。Xについても、会社は生命保険会社との間で、被保険者をXとして①受取人をXの遺族とする企業年金保険及び②受取人を会社とする団体定期保険二口に加入し、Xの死亡により会社は保険金合計944万1360円を受領した。
その後、会社は遺族に退職金として300万円を支払ったが、その余の保険金残金644万1360円を支払わなかったため、遺族がその支払いを求めて提訴したものである。
裁判所は遺族の請求を認容し、会社に対して保険金残金と同額の死亡退職金及び弔慰金を支払えとの判決を言い渡した。
判決のポイント
一 会社では就業規則等の定めはないが、退職時に相当額の退職金が支払われること、右退職金の算定額は退職時の給与額及び勤続年数を基準として決定されるものであったこと、また、その引き当てとして本件の保険金が使用されることは、保険契約の当時から既にその内部で了解されていたものと見ることができる。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
平成9年3月3日第2143号10面 掲載