社会福祉法人陽気会事件(神戸地判平8・5・31) 労働協約の解約と不当労働行為の成否 弱体化狙いは「支配介入」 ★
別途合意ない限り従前の条件が適用
筆者:弁護士 開原 真弓(経営法曹会議)
事案の概要
社会福祉法人陽気会において陽気会労働組合が絡成され、①同組合を唯一の労働組合と認める、②労働条件に関する事項はすべて組合と協議の上実施する、③人事異動は組合と協議し合意の上実施する等を内容とする労働協約が締結された。同法人の施設「陽気寮」において火災が発生し、入寮者8名が死亡した。当日の宿直者は組合の幹部Aら7名であったが、焼死者のうち7名がAの担当であった。火災後Aは執行委員長に就任した。火災後にAら当直者の提出した報告書の疑問点に関する事情聴取がなされ、Aは、火災時及び2カ月前の自動車走行中にふらっとしたこと、警察の事情聴取でメニエール病のような診断を受けた旨供述したことを述べた。そこで職員からAと一緒に夜間勤務に就くことは不安との意見が出、法人は、火災当日の救出活動に対する疑問及びメニエール病等を理由に当分の間、夜間勤務・公用車の運転を免ずる等の業務指示を行った。Aはメニエール病の症状所見は認められないとの診断書を提出して指示の撤回を求めたが、法人は拒否。一方、陽気会労組は全国一般労働組合陽気会支部となり、右業務指示撤回等につき団体交渉がなされたが、法人は労働協約を解約する旨陽気会支部に対し通知した。
地労委は本件及び本件解約を不当労働行為とした。法人は①本件指示はAに対する他の職員の不信感及び病気を理由とするもので、不当労働行為意思がない、②期間の定めのない労働協約は90日前の予告により解約できるとの見解に立って解約通知をしたもので不当労働行為意思がない、と主張し救済命令の取り消しを求めた。
判決のポイント
裁判所は原告の請求を棄却した。…
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