日本通運事件(大阪地判平8・9・20)車を持込み配送等を行う者の労働者性? 使用従属関係なく請負い
1997.04.14
【判決日:1996.09.20】
労働時間の拘束性の有無を重視する
筆者:弁護士 安西 愈
事案の概要
本件は、原告が、労働契約上の地位の確認と、毎月の賃金の支払いを求めているのに対し、被告が、原告との間には労働契約関係は存在せず、運送下請けの関係に過ぎないものであるとして、争っている事案である。
争点は、原告と、被告との間で締結された貨物の宅配、仕分け等に従事する旨の契約が、労働契約と解すべきなのか運送等請負契約なのかという労働者性の有無であり、本件の特徴は、「Sグループは、原告らへの賃金支払いの受け皿として会計処理の名目上作られたに過ぎず、全く実体のないものであり、その代表者とされるSは、実質的には被告の労務管理者として位置づけられる存在であり、会社とSグループ間の請負契約は、会社とSグループの構成員各自との間に存在する労働契約の存在を陰蔽するための偽装に過ぎない」ものか、「原告と会社との間には直接の契約関係は存在せず、原告は会社と小口貨物の運送に関する請負契約を締結していたSグループの一員として、物流センターにおける運送に下請業者として携わっていたに過ぎない」という点である。
判決のポイント
労務提供者と受領者の間に使用従属関係が存在するというためには、…
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平成9年4月14日第2148号10面 掲載