錦タクシー事件(大阪地判平8・9・27) 年休・労災休業日を賞与算定日数から除外 「公序良俗」に違反しない
乗務の積算による計算に合理性ある
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、昭和43年9月13日、運転手として錦タクシー株式会社(以下、会社)に入社した労働者である。会社とXの所属する錦タクシー労働組合との間において、平成5年夏季賞与については同年7月6日に、同年冬季賞与については同年12月6日に、平成6年夏季賞与については同年7月3日に、それぞれ協定書が取り交わされた。これらの協定書で定められた賞与計算について、協定書4条4項に記載された日数割の基礎となる「乗務日数」に年次有給休暇の取得日数および労働災害による休業日数を算入しない取扱いをしているのは次の理由により公序良俗(民法90条)に反し無効であると主張した。即ち、年次有給休暇の取得及び労働災害による休業は、労基法129条、124条、同法75条ないし77条等によって労働者に保障された権利であり、年次有給休暇を取得し、労働災害により休業した場合に、賃金、賞与その他の点において他の労働者と差別され、不利益な取扱いを受けることになれば、労働者のこれらの権利の行使を抑制することとなり、ひいては労基法が労働者に右各権利を保障した趣旨を実質的に失わせることとなる。したがって、使用者は、年次有給休暇の取得及び労働災害による休業の権利の行使による不就労を理由に、賃金、賞与その他の点において、他の労働者と差別し、不利益な取扱いをしてはならない義務を負うというべきである。
Xは、以上の様に主張して、会社に対し、年次有給休暇の取得日数および労働災害による休業日数を乗務日数に入れて算定した賞与金額と実際に支給された賞与金額との差額の支払いを求め、提訴した。
判決のポイント
賞与の支給に関する右のような協定書の取扱いは、…
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