日本電信電話事件(大阪地判平8・7・31) 弁明の機会を与えずになされた懲戒の効力 直ちに違法無効といえない
「出席させ弁明」の明記があれば別
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、昭和46年4月1日、被告の前身である公社に入社し、被告の支店や支店傘下の営業所に営業担当者として勤務していた。
原告は、平成2年2月から平成5年4月の間に、上司、同僚などに対し、大声で暴言を吐いたり、無言電話などをかけるなどの嫌がらせ行為や暴行行為、恐喝行為を繰り返したり、誓約書などの作成を強要したり、社内外で個人を中傷誹謗するビラを貼付するなど14件の非行行為を重ねた。上司が再三にわたり注意を与えたが、原告はさしたる反省をすることもなく非行行為を繰り返したため、被告は原告の各行為が就業規則に定める「職務上の規律を乱し、又は乱そうとする行為」「社員としての品位を傷付け、又は信用を失うような非行」「会社施設内において、風紀秩序を乱すような言動」「強要して、その就業を妨げるとき」などの懲戒事由に該当し、更に「再三注意をされてなお改悛の情がない」にあたるとして、原告を懲戒に付することとし、平成6年10月13日、原告を諭旨解雇とした。
原告は、被告が摘示した原告の各行為が懲戒事由にあたる非行行為でないことや、本件懲戒が原告に何らの弁明の機会を与えないままなされたものであること、諭旨解雇が処分の公平・適正という見地から明らかに均衡を失しているなどから無効であると主張、従業員の地位確認及び賃金の支払いを請求したが、大阪地裁は原告の請求をいずれも退けた。
判決のポイント
就業規則上、社員に対し懲戒をなすに当たり、…
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