文化シャッター事件(静岡地浜松支判平9・3・24) 被保険者の同意ない団体生命保険契約 保険契約全体が無効に
個々人の個別的具体的同意必要
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告会社の従業員Pは、昭和63年6月クモ膜下出血により死亡した。会社は、Pを含む全従業員を被保険者とし、会社を保険金受取人とする団体生命保険契約を8社と締結していたので、団体生命保険の保険金合計4892万円余を受領した。
Pの妻子は、被保険者Pの遺族に引き渡すことが会社とPの、労働契約の内容に含まれていたなどと主張して、保険金の引き渡しを請求した。
判決のポイント
本件団体定期保険契約は、被告と各生命保険会社との間において、被保険者を被告の従業員全員とし、保険料負担者及び保険金受取人をともに被告として締結された団体生命保険契約であることが認められるから、商法674条1項本文にいう他人の死亡を保険事故として保険金が支払われる保険契約とみることができる。
商法674条1項本文が他人の死亡を保険事故とする保険契約の締結について、その他人である被保険者の同意を得ることを契約の効力発生用件とした趣旨は、この種の保険は一般に被保険者の生命に対する犯罪の発生を誘発する危険性があること、保険契約者ないし保険金受取人が不労の利得を取得する目的のために利用する危険性があること、一般・社会的倫理として同意を得ずに他人の死亡をいわゆる射倖契約上の条件とすることは他人の人格を無視し、公序良俗に反するおそれがあることなどからこれらを防止するためであるということができる。
たとえ団体定期保険契約の場合であっても、当該「他人」である従業員各人がその保険契約の存在を知らされていないとするならば、右規定がその他人の同意を必要とした趣旨を損ない、公序良俗に反する結果になることはその他の場合と少しも異なるところはないので、…
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