日本電信電話事件(東京地判平8・10・30) 頸腕症の欠務者が誹謗ビラや診療妨害 適格性欠如で妥当と認定
1997.07.28
【判決日:1996.10.30】
心情を考慮しても解雇権濫用でない
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、業務上の疾病である頸肩腕障害に罹患した労働者Aが、①療養を指示されて欠務中に会社及び健康管理医を誹誘するビラを配布したこと、②会社の健康管理所に来所して居座り、他患者の診療を妨害したこと、③指定病院での精密検査受診指示を再三にわたり拒否したこと、④57日間にわたり就労命令を無視して無断遅刻・無断早退等を繰り返したことにつき、労働者としての職務不適格性を示すものであるので、就業規則所定の免職処分事由である展務に必要な適格性を欠くとき」に該当するとして、同人を免職処分にした。
これに対しAは、①は、3日間、いずれも各30分にすぎない上、「言論の自由」を行使したにすぎない、②は、健康管理医に罹病者の取り扱いについて理解を求めるためであった、③は、会社側が検査項目・検査内容を明らかにしなかったためである、④は、会社の勤務指示そのものが「半日勤務程度」を適当とするという主治医の行ったAの健康状態についての診断を無視した」違法・不当なものであったとし、免職処分は解雇権の濫用であるなどとして争った。
判決のポイント
Aの適格性の欠如を理由とする解雇の有効性が争点である。Aに対する会社の本件各勤務指示は、いずれも合理的かつ相当であるから、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
平成9年7月28日第2162号10面 掲載