北都銀行事件(仙台高秋田支判平8・5・28) 完全2日制に伴う1日の労働時間延長 不利益変更に当たる
固定的な残業代は既得的利益と判断
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
被控訴人は、完全週休2日制とすることとし、労組と合意して、全土曜日を休日とし、終業時間を平日につき午後5時、特定日につき午後5時50分とする就業規則に変更した。従組に対しては、就業規則に関する協定を解約通告し、控訴人らに対しても平成元年3月1日より新就業規則を適用した。その結果、控訴人らの所定労働時間は平日は10分、特定日は60分延長することとなった。
控訴人(987人中30人で組織)らは、新就業規則が無効であると主張して、旧就業規則に基づいて計算した時間外手当の金額と、現実に支払われた金額の差額の支払いを求めたのが本訴である。
第一審判決(秋田地判・平成4・7・24)は、完全週休2日制実施に伴って就業規則を変更し、1日の所定労働時間を10分ないし60分延長したことは、たとえ年間実労働時間が短縮されたとしても労働条件の不利益変更だが、内容には合理性があり、改訂に同意していない控訴人らも新就業規則に拘束されるとして、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らは控訴した。控訴審判決は、控訴人らの請求を認め、被控訴人に対し控訴人らの時間外手当の差額の支払いを命じた。
判決のポイント
1、新就業規則が終業時間を繰り下げたことは、労働時間が賃金と並んで最も重要な労働条件であり、たとえ法定の凱働時間の範囲内といえども、特別の事情がない限り、労働条件の不利益変更にあたると解すべきである。…
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