学研ジー・アイ・シー事件(大阪地判平9・3・26) 契約社員を職務不適当理由に途中解約? 習熟せず初歩的ミス繰返す
指導員に反発しよからぬ噂吹聴
筆者:弁護士 安西 愈
事案の概要
東京に本社を置く被告会社の奈良営業所は、事務職のセクレタリーとして嘱託社員を募集、原告(女性)の採用を決め、平成6年9月7日、1年間の契約期間を定めた。しかしながら、原告は職務に習熟せず初歩的なミスが多かったため、職務に通じ原告を指導する立場にあるセクレタリーのHは、原告の仕事ぶりに満足せず、原告に対して辛辣な言葉を投げかけるなど厳しい態度をとるようになった。
原告は、平成7年3月11日、被告会社との間で契約期間を平成8年3月10日までとして更新したが、業務成績は向上せず、Hとの関係も悪化の一途をたどり、Hの指導を受けることに消極的となり、初歩的問題についても大阪事業本部等に電話で問い合わせを繰り返すようになった。このような経過の中で、原告はHへの反発から、Hが勤務表を改竄したと主張したり、HとT(上部の地域統括者)が愛人関係にある、右両名は結託して女性従業員を辞めさせた等の風評を電話などで吹聴し、東京本社に直訴するに及んだ。
大阪本部の部長Dは、原告に対して平成7年8月14日に仕事の能力が充分でないこと及びHとTの愛人関係に関する噂を吹聴して職場の規律を乱したこと等を理由として、同年9月15日付で解雇する旨を言い渡し、併せて自己都合退職の形を取ることを勧め、原告も一応これを了承したが、自己が解雇されることに納得がいかなかったことから、その後も奈良営業所でHとTの愛人関係の件を話し続ける等をしたため、Dは8月23日に原告に電話で注意し、同月25日に奈良営業所を訪れて叱責し、同日限りで職場に出てこないこと、退職届を送ること、退職手続きを取ることを申し渡し、平成7年9月11日に、雇用契約解除に関する確認書を送って同月15日をもって解雇した。
本件は、右を不当として労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、賃金の支払いを求めた事案である。なお、本件においては、原告は、Hの不正行為を東京本社に報告したところ、Dがそのことで話をしたいと称して奈良に来て原告をホテルに誘いホテルのDの部屋に連れ込もうとし、さらには居酒屋で性的嫌がらせを伴う言動をしたばかりか、原告がこの件を東京本社に報告したところDから解雇する旨の通告を受けた旨を主張し、本件解雇は本件性的嫌がらせ行為を隠蔽するためになされたと主張した。
判決のポイント
1、本件のいわゆるセクハラの事実の主張について裁判所は、…
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