神戸化学工業事件(大阪地判平9・2・12) 減給、降格したうえで懲戒解雇処分に 相当性欠き濫用に当たる
退職金の不支給措置は苛酷にすぎる
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社との間で、昭和59年11月、雇用契約を締結し、平成5年9月にはY社の製造課長に就任、原料から製品を製造する部門の責任者となった(Y社の製造部門には、部長職はいない)。
Y社はXに対し、製品に不良品を発生させたことの報告の遅れと平成7年5月度分以降の生産報告書を提出しないことを理由に、同年8月15日、その給与を10%減給する旨の処分をし、さらに、同年8月の棚卸しの際、Xが製品記号DCALの流出事故を報告せず、また製品記号DAANについて生産報告書と在庫に食い違いがあることが判明したため、同年9月7日、Xを製造課長の職から解任し、平社員とした。
Xは、減給処分を受け、次いで製造課長の職を解かれたことから、就労を続ける意欲を喪失し、同月13日朝、Y社に対し、同月30日をもって退職する旨の届けを提出した。しかし、Y社は、Xの就業態度を問題視していたこともあり、その日のうちに、Xに対し、「就業規則56条5項(業務上の怠慢又は監督不行届によって災害傷害その他の事故を発生させたとき)、6項(故意又は重大な過失により会社に損害を与えたとき)、7項(業務命令に不当に反抗し、職場の秩序を乱したとき)及び10項(懲戒が2回以上に及び、なお改悛の見込みがないとき)により懲戒解雇する」旨記載された通知書を交付して、懲戒解雇した。
Xは、懲戒解雇は無効であるとして、退職金の支払いを請求して提訴した。
判決のポイント
特段の事情がない限り、懲戒行為の当時に使用者が認識していなかった事実をもって懲戒の理由とすることはできない。
Xが度々にわたって報告を懈怠したなどの事実は、専らXの管理職である製造課長としての適格性の不存在に起因する(一従業員としてのそれに起因するものでない)というべきだが、Xは、…
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