首都高速道路公団事件(東京地判平9・5・22) 新聞に投書し会社批判した従業員を停職に 秩序維持から処分は正当
1997.10.13
【判決日:1997.05.22】
企業の違法行為等 是正目的ならば別
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、神奈川県知事が計画決定しYが事業者となって実施することとなっていた川崎縦貫道(一期)建設工事につき、かつてYの職員として在職中、用地確保、維持管理費等の観点から批判を加え、他のルートに変更の上建設すべきであるとの意見を新聞紙上に投書した。Yは、この投書により著しく名誉を段損され職場秩序が乱されたとして、就業規則に基づきXを本件懲戒停職処分に処した。本件は、これを不服としたXがYに対し、主位的に本件懲戒停職処分の無効確認を、予備的に本件懲戒停職処分の取り消しを求めるとともに、本件懲戒停職処分が違法であったとして不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
判決のポイント
1、本件懲戒停職処分無効確認請求は、既にXがYを定年退職しており、確認の利益を欠く。また処分取消請求は、形成の訴えであるが、法律でその主体や要件が個別的に決められている場合のみ訴えの利益があるから、定めのない本件は却下となる。
2、懲戒処分の有効性 本件投書のように、従業員が職場外で新聞に自己の見解を発表することであっても、これによって企業の円滑な運営に支障をきたすおそれのあるなど、企業秩序の維持に関係を有するものであれば、例外的な場合を除き、従業員はこれを行わないようにする誠実義務を負う一方、…
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平成9年10月13日第2172号10面 掲載