学校法人池田学園事件(大阪地岸和田支決平9・3・31) 期限付常勤講師の契約更新拒絶の効力は? 採用の特異性から“濫用”に
専任者に勝る重責 解雇の理由が必要
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
1、債務者は、コンピューター情報処理専門学校(以下「本件学校」という)などを経営する学校法人であり、債権者は、教員免許を有し、平成3年4月から本件学校の高等課程の1年間の期限付常勤講師として勤務したが、1回更新した後の平成5年3月末で退職した。
2、本件学校で数学の教員に欠員が生じ、校内事情に通じ指導力のある教員を急遽補充する必要があったことから、債務者は、職務経験もあり指導力を備えている債権者に再度就職することを求めた。債権者は、1年間の期限付常勤講師であれば身分が不安定であるとして、復職に抵抗したが、双方の妥協の産物として、平成6年7月1日から翌年6月末の学期を跨ぐ1年の期限付契約を締結し、再び常勤講師として本件学校へ復職した。そして、債務者と債権者は期限付契約を1回更新し、債権者は、平成6年度、7年度に生徒指導部副部長、学級担任、学年主任などの校務や数学と理科の教科担任の教務を担当した。
3、債務者は債権者に対し、平成8年4月16日、生徒数の減少による経営難を理由に同年6月30日をもって雇止めとする旨通告した。
債権者は、雇用契約の期間の定めは形式にすぎず、実質は専任教員と同等で、契約が更新されることを期待する法的利益があり、その更新拒絶は解雇と同様に正当な理由が必要であると解すべきところ、本件更新拒絶は正当な理由がなく、同一条件で雇用契約が更新されたと主張して、労働契約上の地位の保全と賃金仮払いの仮処分を申立て、裁判所はこれを認めた。
決定のポイント
1、再採用の経緯や期間の定め方に特異性があり、…
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