日本電信電話事件(大阪地判平9・4・25) テレホンカード1万枚隠匿の部長を懲戒解雇 「信用損い」濫用といえない
管理の立場にあり秩序維持に悪影響
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社神戸支店公衆電話部部長としてテレホンカードの管理責任者の地位にあり、テレホンカードの販売・管理に従事していた。平成6年1月中旬頃、Xは部下のKより、50度数のテレホンカード(ホワイトカード)の在庫に1万枚(500万円相当)が余剰となっているとの報告を受けた。
その後、Xは、あたかも右の余剰テレホンカード(以下「本件カード」という)が存在しないかのように同月末の棚卸しをして、支店長にも不符号がない旨報告すると共に、事情を知らない部下のHの自宅へ本件カードを持ち出して、Hに対し誰にも口外せずに当分の間本件カードを預かるよう指示した。
Hは、本件カードを保管することに不安を覚え、3月7日ころ、上司等に相談した。そして、同年4月9日、Y社関西支店長からテレホンカードを持っているのではないかと質問され、同月11日、同支店長に本件カードを引き渡した。
Xは、4月16日、Y社より事情聴取を受けた際、H宅への本件カード持ち出し行為について言葉を濁していたが、同月18日の事情聴取においてこれを認めた。
Y社は、平成6年12月28日、Xに対し、本件カードの隠匿を理由として懲戒解雇する旨の意思表示をした。
Xは、右懲戒解雇は解雇権の濫用であって平成6年12月31日に退職したとして、退職金4220万円およびその遅延損害金の支払いを求める訴訟を提起した。
判決のポイント
Xは、本件カード持ち出し当時は、…
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