函館信用金庫事件(札幌高判平9・9・4) 週休2日制実施に伴う就業規則変更の合理性 残業代削減に利用と判断 ★
必要性に乏しく権利を一方的に奪う
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
Y(函館信用金庫)は昭和63年、完全週休2日制の採用に伴う就業規則の改訂案を労働組合(Y従業員労働組合)に提示し、平成元年2月1日から新就業規則を施行した。しかし、労働組合員であるAら7名は、新就業規則は労働組合との十分な協議もなく制定されたうえ、平日の勤務時間を従来、午前8時50分から午後5時までであったのを、午前8時45分から午後5時20分までに、25分延長し、時間外割増賃金を減少させ、平日の労働の密度を強化するという不利益を労働者にもたらすもので無効であると主張して、旧就業規則に基づいて、平日午後5時以降の勤務時間の延長分(午後5時から20分間)について割増賃金の支払いを求めて本訴を提起した。
これに対して、Yは新就業規則により年間の総労働時間が短縮され、他の金融機関との競争力を増すために必要であった等と、その合理性を主張して応訴した。
第一審判決(函館地裁平6・12・22)は、新就業規則の施行によっても、平日午後5時以降の実労働時間に影響はないこと、時間外手当が減少するとしても、労働者に時間外労働を求める権利はなく、不利益性の内容として重要視することはできないこと、ATMの普及により、窓口来客数が減少していること、土曜日に通勤から解放されること等から新就業規則の内容は合理性があるとして、Aらの訴えを斥けた。Aらはこれを不服として控訴した。
判決のポイント
本判決は、次のように判示して、第一審判決とは逆に、Aらの請求を認容した。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら