レインズインターナショナル事件(東京地判令元・12・12) 100時間の固定残業代、公序良俗違反で無効? 繁忙期に差額支払われ有効
深夜割増を含む計100時間分の固定残業代を支払っていた飲食店の店員が、公序良俗違反で無効と訴えた。東京地裁は、当時の限度基準告示を大きく上回るが、直ちに違法等とはいえないと判断。時期により残業数に大きな差があるものの、超過部分は差額が支払われたことなどから賃金体系上も残業代の対価と認めた。勤怠システムの休憩時間は実態を反映しておらず、取得できたのは15分と推認した。
「割増対価」と明確 限度基準上回るが
筆者:弁護士 渡部邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者甲は、平成22年頃から会社が運営する飲食店(A店)でアルバイト従業員として勤務し、平成24年5月、会社との間で正社員として期間の定めのない労働契約を締結した。
会社では、外食産業等向けの営業支援システムを用いて従業員の労働時間を管理していた。会社の給与規程中には、「固定割増手当は、管理職に該当しない社員に対して、時間外勤務又は深夜勤務をしたものとみなしてあらかじめ支給し、固定割増手当の額は、各人毎にみなし時間として70時間相当の時間外勤務手当と30時間相当の深夜勤務手当分を給与決定時に通知するものとする」旨のほか、時間外勤務手当および深夜勤務手当について「固定割増手当により既に支給されている時間分については支給しない」旨の定めがあった。
甲は、会社に対し、会社の認識よりも多くの時間外労働等をした(実労働時間)こと、および固定残業代の支払いが無効であるなどと主張して、未払割増賃金871万2299円およびこれに対する遅延損害金、並びに労基法114条に基づく付加金の支払い等を求めて提訴した。
本件の争点は、(1)実労働時間(始業および終業時刻の認定と休憩時間の認定)の認定と、(2)固定割増手当の支払いの有効性如何である。本判決はおよそ以下のように判示して、甲の請求の一部(約1割相当)を認めた。…
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